この状況はなんだ。

如月君がステージに立っている。しかもソロだ。



「な、なぁ、あいつって何者?ただの高校生じゃねぇって。」



怜斗が言う。

ギター一本だけでこんな大勢の観客を盛り上げている。単音がとても綺麗でキレがある。テクニックが、音作りが、高校生じゃない。

いいフレーズがあると観客たちは手を挙げたり歓声を上げる。その歓声に応えるかのようにもう一段階盛り上がりを加える。


その度胸とテクニック、センス、すべてに心を奪われた。全員、ワケがわからず、ステージの上を見るだけ。涼は近くにいた客に声をかけた。




「すみません、あの人って誰ですか?」

「あ?兄ちゃんたち初めて見るのかい?」

そのおじさんはビール片手に聞いてくる。

「はい。」


すると前方にいた男性たちも話に加わってきた。



「ナツはな、すげぇギタリストだぜ!天才だ!大人顔負けの演奏しやがる。」

「それによ、あの長澤さんの一番弟子だぞ!長澤さんは弟子なんか絶対に取らねぇのによ!」


と、ゲラゲラ笑いながら話す。その反応を見て如月くんはここでは結構顔が知られている人なのだと分かった。


「いつからナツはここでライブしているんですか?」


恭也が聞く。



「初めて見たのは一年前だな。」

「俺は2年前だ!」


ということは少なくとも14歳、13歳頃からは人前で演奏しているってことか。気づくとステージは終わっていて観客の拍手だけが鳴り響いていた。





「そこの3人組。」




さっき案内をしてくれた女の人に声をかけられた。


「ナツ君が裏口で待っていてってさ。」



そういわれ、裏口で待つことに。





「…行こう。俺らの思いをしっかり伝えよう。」