Dying music 〜音楽を染め上げろ〜






色葉たちと別れたあとリュックを持って多目的小ルームに向かう。ステージ後、みんな店番とクラスの片付けがあって楽器の片付けができていなかった。体育館にアンプとドラムだけ残したまんまギターとベース、マイクとか小物を持って戻ってきただけ。シールドもぐちゃぐちゃだし、何なら事件現場くらいの散らかり様だ。


涼と怜斗が体育館の片付け、俺と恭也が部室整備。2つに分かれて修繕作業を行う。


全員分のアンプの電源を落としてあることを今一度確認してシールドを抜く。ドラムはいつもの場所に戻してエフェクターも片付ける。怜斗のベース、恭也と俺のギター、3本分を丁寧に磨く。


文化祭成功させてくれてありがとう、そんな感謝も込めながら優しくケースにしまう。


その間恭也は室内整備。モップでゴミやら埃やらをとり、そのあとは空調の電源や窓の施錠。抜きっぱなしのシールドも片付けてもらう。お互い疲れていて、終始全くの無言状態だったため片付けはすぐに終わってしまった。そのあとは特に何もすることなく、ぼけぇ~っとスマホをいじる。



「これ見ろよ。」



恭也が見せてきたのはLINEのトーク画面。



―『映ってた!』



そのメッセージと1枚の写真が添付されていた。玄関前の電子掲示板だ。そこには


―「軽音楽部・圧巻のステージ!」


という大きな文字とともに僕たちが演奏している写真が写っていた。これ生徒会の人が撮ったのかな。めっちゃいい画角。怜斗が一歩前に踏み出していて。サイドに恭也と僕が囲む感じ。その後ろで涼がスティックを振り上げている構図。

ステージ下から撮ったと思われるその写真はアルバムの表紙ジャケットを思わせるような出来だ。この写真撮った人すごいな。




「やっぱり今日一番のピークはアンコール来たときだったな。」

「それな。リハなしはさすがにきつかった。」

「俺も。ミス連発した。」



地上線上の彼方と最後のコックピットで使っていいたエフェクターは違うものだったし、一発で正確に音が出せる自信はなかった。ソロの部分だってほとんどその場しのぎで考えたものだったからね。ミスだっていつもより多くした。それでもビッタハマっていたのは奇跡だと思う。


「夏樹のアクアリウムでのアレンジがキモかった。」



アクアリウムでのアレンジ?…あ、タッピングのところか。いつもより音を多く組み込んだんだよな。意外と盛り上がっていたからやってもマイナスにはならないかなって思ったんだ。結果オーライだったからいいじゃん。それに、



「お前も相当エグイことしてたけど。」



恭也は「そうか?」と知らぬ顔をする。



「コックピット、初っ端からトばしていたじゃん。よくあれやったよね。」



いつも守りに入ってばかりの恭也がコックピットでハーモニクスぶっこんできたんだよ。あんなにアレンジ苦手だって言っていたのにさ。事前の打ち合わせとは異なった入りで多少の戸惑いはあったが、おかげで観客が上がったから大感謝だ。



「何かできそうだと思って。」

「何それ。……」




その後も音楽の話をしながら涼たちを待つが一向に帰ってこない。体育館整備ってそんなに時間かかるモンじゃないだろ。どうせ他の人たちと喋っているだけなんだろうな。


「…この後って反省会とかすんの?涼から何か聞いてる?」


恭也にそう問いかけた。大体いつもは、フェスのときと通しで演奏したときは反省会をしている。もしかしたら今日も反省会してから解散なのかな。


「特に何も。つーか、今日は反省点なんかないだろ。」


へっ?


「見てくれている人が盛り上がってくれた。楽しんでくれた。俺らも楽しめた。それでいいじゃん。」



念入りな準備がなかったらスムーズに移動や演奏はできなかった。それにあのアンコールのときも。あのとき涼の一瞬の判断と怜斗の土壇場MCのおかげで場が冷めなくて済んだんだ。アドリブ対応は簡単じゃないのに。


「……何だかんだで大成功だったよね。」

「あぁ。今までで一番よかった。」