Dying music 〜音楽を染め上げろ〜






ギターを持ってステージに上がった。筝曲部と入れ違いで上がる俺たちに観客の視線が刺さる。でっかい体育館の中に生徒も先生も親もいる。うわ、壁側に担任発見。見に来たのかよ。セッティングをしている中、怜斗がマイクを持つ。



「みなさんこんにちは!清条高校軽音楽部、AMITIEです!よろしくお願いします!今年度から1年生4人で立ち上げました。みんな上手くて、音楽が大好きな人たちです!今回ははじめての文化祭での演奏ってことでとてもワクワクしています。」



声震えてない。本当に緊張していないんだ。もしかして本番に強いタイプなのか。怜斗は噛むこともなく、観客に話し続ける。

MCは怜斗と僕で考えた。これが案外難しくて。Midnightみたいなライブスタジオやクラブだったら多少煽ったりしても盛り上がってくれるけれど今回の対象は生徒。加えて先生と保護者だ。軽音楽部のイメージが落ちないように、内輪ノリにならないように色々工夫した。


シールド・エフェクターその他諸々、丁度いいタイミングで準備が完了したところで怜斗に目線を送る。




「それじゃあ、さっそく行きましょう!1曲目、Getbeat!!!!」




照明が暗くなり、それぞれ楽器を構えた。






すぅぅぅぅーーーーっ………………――ッ!!




🎶♬♬~!♪♬♪♪♬♪!










涼のカウントで一気に入る。弾きだしのイントロで一斉に歓声を上げ、ざわめく会場。会場の空気が変わったのを肌で感じた。





――「あの日見た景色のー」



怜斗の歌声がスピーカーを通して体育館に広がる。相変わらずよく伸びる歌声。前のままでも全然いい。でも、そこに細かなテクニックを加えることでさらに表現力を高めた。


リズム隊は焦らないこと。ギターは一定のスピードをキープしながらもコードは的確に。ドラムの軸はブレさせない。打点を正確に。手首の柔軟さを使え。リズム走りすぎないように。




――「どうにもならなくったて!」




♪♬♪♪♬♪~~♪♬




生演奏でカラオケみたいにエコーも何もかかっていない状態でこんなに安定している。本人は気づいていないかもだけれど歌唱力半端ないんだよな。



――「おぉぉーーっ!」

――「すげぇーー!」



体育館からそうした声が聞こえ安堵する。会場のこの一体感。ドラムのビートに合わせて体を揺らす人もいれば手拍子をしている人、動画を取っている人。大丈夫だ、シラけてない。




♪♬―♪♬♪~!♬♪



Getbeatは全員が弾いた経験がある曲。怯えないで、自信をもって演奏する。




「ありがとうございましたー!」






弾き終えると、大きな拍手が起こった。指笛を吹いている人なんかいるし。4人で目を合わせて「よかった」と一安心する。最初の掴みはバッチリだ。



「それではここでバンドメンバーを紹介しようと思います!まずはギターの恭也!」



♪♬♪♪♬♪!



怜斗の呼びかけに恭也がギターを鳴らし、お辞儀をする。僕らで考えた演出。MCの怜斗の呼びかけに自己紹介として一人ひとり短くソロをすることにしたんだ。



「続いて、ドラムの涼!」

「もう一人、ギターの夏樹!」

「そしてベースボーカルの怜斗です!」



ソロが終わるとそれぞれに拍手が送られた。さあ、まだまだこれからだ。気は抜けない。このあとすぐに「アクアリウム」が待っている。