時間が来たので楽器類の移動を始める。アンプとエフェクター、それぞれ楽器を部室から運び出す。ドラムは内田先生にも手伝ってもらってみんなで移動。
この学校、エレベーターなんかないからすべて人力。これを3往復。マァジで重てぇ。何でこの学校エレベーターないんだ。今はバリアフリーの時代だろ?
1階まで降りた後、渡り廊下を通ってステージとなる第一体育館へ。
「恭也、シールド絡まっているから解いて。夏樹、チューニングは問題なさそうだったら機械頼むね。涼は予備のスティック持ったか?」
「アンプもエフェクターもマイクも大丈夫。ボリュームはMC中に各自調節お願い。」
「音響OK。MC進行はステージ上がったら全部任せるってさ。」
「じゃあ曲のタイミング最終調整するぞ。まずGetbeatから~…」
怜斗が全員の持ち物チェック、恭也が最終調整の確認、僕は全員分の楽器とアンプの電源や装置のチェック、涼は生徒会と音響の最終打ち合わせ。全員、それぞれ役割を決めて確認し合う。ステージの入れ替えはスムーズに行わないと後が詰まってしまうからね。全部確認して何も問題がなければここで待機。
ドキドキすんね。いや、結構心臓バクバクしてんだよ?
はじめ…軽音楽部に勧誘されはじめた頃。
そのときはこの3人とは絶対にやっていけるはずがないと思っていた。熱血漢とスカしたやつと子ザル。このくらいの認識。身内・顔見知り以外の人間に対して警戒心が強かった。
正直、彩音や色葉にだって多少の疑いの念はあった。この人たちも中学の奴らみたいな人間なんじゃないかって。全然そんなこととは何も縁のない善良な子たちなのに。最低だよね、僕。
軽音楽部に入ったのだって最初は様子見で入ったんだ。実際に本人たちに「合わなかったらやめる」って宣言したんだし。1,2か月したら普通にやめてやろうって、ちょっと酷いこと考えていたりもした。そのまま高校もやめて、通信制に変えようかなぁなんて…。
それが急に決まった高校生バンドフェスのせいでやめるタイミングがなくなってしまったんだよ。そしたら、自分でも悔しいけれど、案外楽しくて。気づいたらやめる気なんてなくなってた。完全に僕の負け。根性負け。
もうここまで来ちゃったんだからやるしかないよね。
「………終わったよ。」
前の筝曲部が終わった。いよいよだ。
「よっしゃ、」
涼が手を広げたのを合図にみんなで円陣を組む。
「堂々と演奏しよう。あとは楽しむだけだ。」
「ベースと歌は任せろ!」
「頑張りましょう。」
「…沸そう。」
一言ずつ言ったあと涼が「んじゃ、行くか。」と大きく息を吸う。
「せーのっ!」
「「「「AMITIE!」」」」
清条高校軽音楽部、AMITIE。
――最高のステージの始まりだよ。
