「こんばんはCyanです。」
久しぶりにマイクを通した。その声に歓声が上がる。平日なのにいつも以上に人が多いな。後ろまで満杯だ。
「まず、始める前に少しお話をしようかと思います。」
マイクを外してステージの縁に座った。いつもとは違う雰囲気に観客たちもざわめく。
「小学5年生のとき、はじめてここのステージに立ちました。緊張しながら披露した演奏は下手くそすぎて、拍手なんか貰えませんでした。それが悔しくてたくさん練習した。
そしたら今度は…怖いって言われました。バケモノだって。まわりから変な目で見られることが怖くて、自分を隠しました。このステージもそうです。皆さんの反応を伺いながら、ビクビクしていました。怖がっていたんです。」
バンドや人の要望に合わせることが一番いいと思っていたんだ。
何か後で小言を言われるよりも、自分で先回りして解決することが最適策だって。
ステージが終わるたびに、今日も「しっかり周りに合わせる」という仕事を全うできたって安堵していた。
でも心のどこかで物足りなさや、自分を偽っていることへの罪悪感みたいものがあった。
「そんな僕に背中を押してくれる人たちがいました。その人たちは…こんな僕を受け入れてくれて、あなたはあなたでいい、俺らの仲間であることには変わらない、そう言ってくれました。
その言葉に救われました。隠さなくていいんだって。何言われても自分の音楽をしていいんだって気づかされた。だから今日は――」
ステージからお客さんを見渡した。
「Cyanのありのままのステージを見てほしいです。」
「いつもとちょっと違うかもしれない。驚くかもしれない。それでも、みなさんに届けたいです。………聞いていただけますか?」
………………っ。
怖くて客たちをまともに見ることなんてできず、下を向いた。この沈黙が余計に不安を掻き立てる。
、――
――「聞くぞ!」
‼
―「Cyanの歌聞かせてくれよ!」
―「CyanはCyanだ!」
―「応援し続けることは変わらないよー!」
次々に声が上がった。
…今日は変だ。久しぶりに昔の話をしたからだろうか、幼い頃の記憶が浮かび上がって懐かしい気持ちになる。
ギターを始めて8年。悔しさも嬉しさも悲しさも楽しさも全部ここで味わった。Midnightでここまで育ててもらった。観客たちからの暖かい声に胸のあたりがきゅっとなる。
「ありがとうございます…っ。」
もう一度頭を下げた。そして、ステージに立ちあがってギターを構えた。
「…さぁ、行きますか!」
僕の掛け声に観客のボルテージが上がる。
昔は怖かったステージ、今は――
自信を持たせてくれるステージだ。
