Dying music 〜音楽を染め上げろ〜





「お前ら、泣いたりびっくりしたり嬉しがったり忙しねぇな。」



扉の方から聞こえた声。振り向くと、師匠が壁にもたれかかりながらこちらを見ていた。


いつからいたんだ。全然分からなかった。



「その様子だとちゃんとみんな納得できたみたいだな。」



そう言うとそのまま僕らの前に立った。



「バンドってのは衝突が付き物だ。これから先も今回みたいなすれ違いが起こるかもしれない。全員が同じ人間じゃねぇんだから当然。大切なのはそこからどう立て直すか考えることだ。たくさん話し合ってイメージを共有する。時には妥協も必要だ。」



バンド内でもめ事が起きることは日常茶飯事、ということは耳にしたことがあった。Midnightによく来ていたバンドも知らないうちに解散していたこともあったくらい。


方向性やスキルレベル、音楽性、練習に対する意欲、考え方。バンドは様々な糸が複雑に絡み合っている。


いつ起こるか分からない。些細なことをきっかけに起こるトラブルと衝突。それを今回、全員が身をもって体験した。





「ところでお前ら、門限とかあるか?」





師匠は急に3人に聞いた。


3人はそれぞれ首を横に振った。もないということを確認するとそのまま目線を僕に合わせた。







「Cyan。」









久しぶりに呼ばれたその名前に無意識に姿勢がよくなる。






「プラべ―トライブ、1曲分なら枠開けられるがどうする?」






思ってもみなかった問いかけに思考が停止した。

師匠は続けざまに「ちなみに衣装と仮面なら前に置いて行ったのがあるぞ。」と、そう加える。







「……いいの?」






それは、つまり…みんなの前で歌っていいってこと?





「お前次第だ。」



「……聞いてくれる?」




聞いてもらいたい。



画面越しじゃない、生のステージを見てほしい。








「もちろんだよ。」



「やります。」






力を込めて答えた。師匠は笑うと



「30分後に出番だ。」



そういって仕事場に出て行った。