Dying music 〜音楽を染め上げろ〜






「…ギターも…あれが本当の演奏スタイルじゃない………。怖くて見せることができなかった。気持ちの悪い演奏って言われることが怖くて……また、離れていって、一人になったらどうしようって。」



唇を噛んで泣きそうになるのをぐっとこらえた。手を抜いた演奏、言われてみればそうかもしれない。抑えていたことは事実だ。




本気で音楽と向き合う。



向き合っていなかったのは自分だ。



「みんなのこと心から信じられなかった。学校が……部活が楽しいって高校で初めて知った。だからぁ……っ、この関係が切れたくなくて…この活動をバカにされたり………距離を置かれたりすることが嫌だった。本当に………ごめんなさい。」



ここまで仲良くしてくれていたのに心の中で疑っていた。人がこんなに優しいなんて知らない。

つくづく僕は人間関係に対して不器用な人間だ。どうせ人間なんてみんな同じ生き物だって、そう思っていたんだから。

ずっと隠してたこと。みんなをこれまで、信じていなかったこと。そのことも含めて深く、謝った。













「……………馬鹿にすると思うか?」












しばらくの沈黙の後、涼が言った。



「俺らが、努力している人間を笑うと思うか?」



声を震わせて問いかけてくる涼の言葉に首を横に振った。違う、みんなはそんな風に笑う人たちじゃない。そんなの…………知ってる。

涼は突然、僕の肩を掴んだ。



「死んでもやらねぇよ!つか、謝んなよ⁉何で謝んだよ⁉馬鹿になんか絶対しない!夏樹は努力と実力でここまで来たんだろ⁉それは、めちゃくちゃすごいことだよ!」



そう強く揺すられたあと、顔を見ると涙で顔をしわくちゃにさせていた。



「悪かった。」



恭也が急に謝った。



「何で謝るの…………。」

「俺がCyanだってことを話させたものだ。結果的に昔の……いじめのことも思い出させて……」



らしくないじゃん……謝らないでよ。しっかり自分の口から正直に話す必要があったんだ。話すべきことだった。



「夏樹が悩むことがあるのなら全力で守るし力になる。夏樹は夏樹だ。一人で抱え込まないでな。」



怜斗は泣きながらも俺の背中を撫でてくれた。


「なにがどうであれ、」


涼が涙を拭った。






「夏樹がCyanでも俺らの仲間であることは変わらないんだよ!夏樹がいないと!成り立たない!」






あぁ…


…泣くなよこんなので…。みんなからの言葉に目が熱くなる。誰かに必要とされていること、受け入れてもらえたことに安堵した。





…僕はCyanやナツである前に如月夏樹だ。

一人の高校生で、AMITIEのメンバーだ。

心から楽しんでいいと、

ありのままの自分でいていいいと。

音の合わさる快感を、嬉しさを、楽しさを。

バンドで活動する難しさや葛藤も。

今まで知らなかった、友達・仲間という存在も。



全部、この3人が教えてくれた。








「…音楽は楽しいものだって改めて思わせてくれて…本当にありがとう。」






そう言った途端、怜斗が「う”ぅ~ぅ"」といつもの奇声を出して,



「何で泣かすんだよぉ!こういう感動モンは卒業式にしろよぉ!」



と、背中を叩いてきた。…コイツ最近泣きすぎ。涼も恭也もそれを見て表情が解れた。



もう誤魔化さなくていいんだよね。心の中のわだかまりがすっと消えて気持ちが軽くなる。