Dying music 〜音楽を染め上げろ〜






退院したあとチャンネルに上げていたすべての動画を非公開にした。コミュニティに「活動休止」そう一言コメントを書いて、ネット界から姿を消した。


音楽をやめたわけじゃない。やめるわけがない。やめるもんか。






数か月後、チャンネルにあのオリジナル曲を投稿した。






……あれは心に溜まった毒を吐き出して作った曲だ。




どれだけ苦しいか。何度死のうと思ったか。どんな感情でいたか。お前らに分かるか。

切り跡、悲しみ、消えない傷。この痛みがお前らに分かるか。

聞きたくもない言葉が幻聴で聞こえるんだ。苦しみながら作った。

作詞作業では言われた言葉、された行為を思い出して吐くこともあった。



それでも作った。伝えたかった。



曲を通して、いじめの残酷さ、人の醜さ、心に負った傷の深さを伝えたかった。伝えなきゃダメなんだっていう使命感さえもあった。これが僕の想いだから。



録音は泣きながら録った。嗚咽して、何度も取り直して、また泣いて。すべての負の感情が籠った曲。



それが現在、4000万回以上再生されているオリジナル曲、





「生存価値理論」





これがサクトさんをはじめとする多くの歌い手にカバーされ、一気に名前が広がった。

ネットのすごいところは拡散性があること。有名な人がその話題を取り上げると瞬く間に広がっていく。

毎日通知が鳴りやまなくて、自分でも何が起きているのか分からなかった。初めて鳴り響く通知音が怖いと思ったよ。



――「これは本当にいじめの残酷さを伝えている」

――「自分だけじゃないって安心した。」

――「気持ちを代弁してくれて嬉しい。」



そんなコメントが山ほどあった。伝えたいことが伝わったんだ。


言葉は人を殺す凶器になる。でも、言葉は人を救うことができる薬にもなる。


世の中には僕と同じ思いをしている人がたくさんいるんだ。いじめだけじゃない。人の心を食い荒らす愚行はいくらでもある。その状況に耐えられず、自ら死を選ぶ人もいる。



あなただけじゃないんだよって、ここにもいるよって言ってあげたい。

怒りや憎しみを表現できないのなら代わりに言ってあげる。通してその人にとっていい方向へ心を動かしてあげる。

音楽しか僕はできないし、それしか方法は知らない。