Dying music 〜音楽を染め上げろ〜







そのあと僕は療養のために入院することになった。精神安定剤の服用、心のケアとカウンセリングの連続。




「やめてぇー!お願いぃ!」

「如月さん大丈夫⁉」




入院したての頃は夜中にフラッシュバックして泣きだしたり、悲鳴を上げたり。自分でもコントロールできていなかった。食事を食べても吐いてしまう。体重も減って骨が浮き出た。

一日のほとんどを病室のベッドで過ごして、たまに散歩で外に出る。でも食べ物を口に入れても景色を見ても子供が笑っていても躓いて転んでも、何も感じなかった。

いじめってさ恐ろしいよ。感情を失くすんだから。

笑えなかった。泣けもしなかった。無の状態だ。


それでもお母さんは仕事帰りに毎日お見舞いに来た。



「体調はどう?」



お母さんは自殺未遂があったあともいつもと変わらず接してくれた。会社の話、家の話。師匠の話。予定が合ったときは家のみんな全員でお見舞いに来てくれたときもあった。




「今日の試合に美奈子さんと麗華が来たんだけどさ、麗華の応援がうるっせぇの。」

「うるさいって何よ~!蓮だってこっちに気を取られて1セット落としてたじゃない!」

「はぁっ⁉それ夏樹には内緒っつっただろ!」





みんなに支えられたおかげでだんだん落ち着いてきて、普通に会話できるくらいには回復した。退院する日にちも決まって、家に帰れることが楽しみだった。



「これ、あなたの部屋にあったもの。先生が渡してもいいって言ってたから。」



ある日、帰り際にお母さんから渡されたもの。それはパソコンとヘッドフォン。入院してからは電子機器とは離れていたから触るのは久しぶりだ。

すぐにYouTubeを開いた。



「見ないうちに更新されているな。」



配信者さんのゲーム実況、好きなアーティストの告知動画。離れていた時間を埋めるようにパソコンにかじりついて見た。



あ。



画面をスクロールするとサクトさんのチャンネルが出てきた。通知マーク…新曲上げてる。ちょうど1週間前だ。



タイトルは「自傷」。


概要欄にはクレジットの他に一言コメントが書いてあった。





――『今までよく頑張った。』






…この言葉の意味はなんだ?そう思いながらもヘッドホンを耳に当てた。
































「………………あ"ぁ………っ……」







心に閉まっていた感情が溢れ出た。







ー「生きているだけで100点なんだ」

ー「息をしているだけで偉いんだ」

ー「苦しさも辛さも悲しさも毎日耐え抜いてきたんだ」

ー「苦しかったら逃げればいい」

ー「逃げることは弱くない」

ー「悲しかったら泣けばいい。」

ー「誰に何を言われようとも」

ー「君は君らしく生きればいいんだ。」

ー「世界に不必要な人間はいないよ。」









一人で泣いた。その歌詞一つひとつを噛みしめるように。





腐った、真っ黒だった心の臓に光が差した。

僕は生きていていい。

自分らしくいていい。

好きなことをしていい。

泣いていい。逃げていい。

心が救われた気がした。

僕の気持ちを代弁してくれている。

救いの手。救いの歌。

死にたかった。

こんな世の中にいたくなかった。

でも今、音楽に助けられて、音楽に心を動かされた。

音楽が僕のすべてなんだ。生きがいなんだ。






分かった。僕がやるべきこと。











「僕は、…………歌を届ける。」

















今度は僕がみんなを救う番だ。