Dying music 〜音楽を染め上げろ〜





「…この曲、お前の声質と合ってねぇな。」



師匠はアップした曲を一通り聞くとそう言った。



「この前のも聞いたが、どうして高音域の曲ばかり歌うんだ?」



それは、だって…




「だって、僕の声は…汚い。」



ギターで演奏するときはバリバリのロックを弾いていたんだけど、歌うときは高音系のバラードを歌うことが多かった。


だって。


上手いアーティストはみんな高音が綺麗だ。キーンって耳が痛くならない高音。ビブラートがかかっていてロングトーンが美しい、そんな風に歌いたかった。



それに比べて僕は綺麗な高音とはかけ離れていた。ガサガサした声。自分の鼻にかかったような歌声が好きじゃなかった。同年代の女の子と比べると低くて、高音なんかほとんど出ない。

音楽のときの合唱が苦しかった。出そうとしても裏返る。喉が痛くなって後半は思い通りに歌えない。



「高音で歌うのがいい歌じゃねぇぞ。」



そう師匠に言われたときちょっと傷ついた。




「でもそれは逆に武器にできる。」

「武器?このガサガサ声が?」

「俺は高音ってのは練習すればいくらでも出せると思ってる。でもな、低音はある意味才能だ。生まれつきの声帯によって出る最低音域は大体決まっている。…低音で歌う練習をしてみろ。あとは自分の声質、音域の研究だ。」




ステージの様子を動画で録る、音程サーチのアプリを使ってどこまで出ているのか調べる。徹底的に自分が出せる最音域と最低音域を分析した。そしたら、今まで歌っていた曲と自分の出せる音域が全然違っていた。師匠が言った通り、僕には低音系が合っていたんだ。


地声でどこまで?

裏声使ったら?


自分で気づけるところはできるだけ見つける。そのほかは第三者から聞いてもらってどんな感じなのか感想を貰った。Midnightに来るボーカルの人に教えてもらうこともあった。




「この歳でこんなに歌える子初めて見ました。どこまでアドバイスしていいんですか?」

「夏樹、どこを聞きたい?」

「できることなら全部教えてほしいです。」

「分かった。じゃあまずは呼吸の仕方だね。」





全部体に叩き込んだ。そのうち、ガサガサで好きじゃなかった自分の声が好きになってきた。機械操作も勉強してMIXも少しずつ覚えて、スマホの小さい画面と何時間も睨めっこして目が痛くなったのも思い出。

もちろん、歌い手活動ををはじめたからってギターを疎かにするつもりは微塵もなかった。むしろ、腕を上げ続けた。




上手くなることは心地が良かった。

お客さんからも褒められて、社会人の人に混じって演奏もした。

海外のアーティストの弾き方を真似した。

できなかったら師匠に聞いて、自分のものにしていった。

これでもっとかっこいい演奏ができる。

もっと拍手を貰うことができる。

もっと、音楽を届けることができる。

そう思って練習した。