Dying music 〜音楽を染め上げろ〜






12歳の誕生日のお祝いでレコーディングセットを貰った。お試し版、値段も安いやつ。

小学生にとって利用規約や初期設定というものは難題だった。見たことのない漢字を読解しながら一個ずつ進めた。

ミキサーの繋げ方、録音方法、アップロードのやり方は何とか自分でできた。著作権やライセンス申請は難しすぎたから師匠に教えてもらった。周りにネット詳しい人なんていなかったから自分で調べながら進める。


ただ、チャンネルを作るとき一つ問題があった。





「ユーザーネームを登録してください?」




ネット上でのユーザーネーム問題。ハンドルネームみたいなの、考えてもなかった。本名はダメだよね。どうしよう。好きな食べ物?「抹茶」っておかしいでしょ。じゃあMidnightと同じナツ?いや、これは本名同然だ。うーん、いいのが思いつかない。




「ど~う~しよ~」






……あ。





目の前のギター。



「………しあん。」







――「音楽を自分色に染めろ。」





僕のギターは青色。

でもただの青色じゃない。

水色でもない。

普通の青色よりも明るい色。

名前にも入っている「夏」を連想させるような爽やかな色、

シアンブルーだ。





シアンブルー、

しあん、

シアン、



…………Cyan。









「Cyanにしよう。」










この色で歌をギターで多くの人に自分の想いを届ける。


これが僕の音楽の染め方。






カチャカチャ…カチっ。








概要欄:【Cyan。12歳。歌とギター。】



初投稿するときは緊張でガッタガタだったよ。ボタン押すのでさえ10分くらいかかったし、投稿したあとも恥ずかしさとちょっとしたワクワク感が交互にやってきてすんごかったからね。




でも、再生回数が増えるわけがない。



素人がただ歌った動画をネットに上げただけだ。しかもその時は小学生でパソコン持っていなかったからスマホで録音した。カラオケ音源同然。ボリュームの比率がおかしいし、トラックも分けずに録ったもの。


MIXだってただ加工すればいいなんて考えだったから酷かった。しかもそのあとのマスタリングとエンコード作業をすっ飛ばしていたから音が変になってたし。ハッシュタグなども設定していなかったから検索で引っかかるわけでもない。低クオリティにもほどがある。


そんなんだから、1週間たっても再生回数は5回とか。Goodボタンも押されていない。そのあとも何本か投稿したけれど全部手応えなし。



何でだろう。カラオケで歌うと音程は合っている。

感情移入もしてるはずだけど何か足りない。

他の歌い手さんやシンガーさんと違う。

何だ?




足りないピースが分からない。なかなか再生回数が伸びなくて師匠に相談した。