しばらくすると予想通り足音が聞こえてきた。
「キサラン!」
扉が開いて2人が入ってくる。あ、前と同じテンションだ。見てて面白いくらい。
「ごめんね、彩音テンション高くて。まだ慣れないでしょ。」
「いいよ、全然。」
そういって隣接されている相談室に入り、椅子を渡す。
「ありがとキサラン~」
彩音がさっきから言ってるキサラン、あとで聞いたら新しいあだ名だって。もちろん却下。この2人は俺のクラスメイト。
佐野彩音《さのあやね》。さっきからテンション高い子。目がぱっちりしていていつも髪をお団子に結っている。テニス部で元気いっぱいな子。
もう1人が風間色葉《かざまいろは》。落ち着いた雰囲気で大人っぽい子。書道部で字がめちゃくちゃ綺麗なんだ。
2人とは入学式のあった日に話しかけてくれたのがきっかけで仲良くなった。まだ知り合ったばっかりだけどたくさんお話してくれる。一番びっくりしたのはやっぱり彩音かな。初対面でガンガン話すからさ。俺がすぐ学校休んでからも会いに来てくれる。
「それよりもギター聞きたい!」
彩音に言われ、壁側からギターを持ってくる。趣味の話になってギターが弾けると話したら聞きたいって言ってくれた。学校にギター持ってくるのは無理。その代わり、浪川先生が音楽の先生と仲がいいからちょっとだけ借りることができたんだ。
感覚でチューニングをする。やっぱり音楽室のギターって結構音狂ってるなぁ。
「OK。リクエストある?」
一通り確認を終え、曲を聞く。
「夏樹の好きな曲で!」
俺の好きな曲か....。
「分かった。じゃあ弾くね。」
🎶〜♫♩〜♪ーーー
俺が選んだのはサクトさんの FirstKing。アップテンポ系で切れのあるサウンドが中毒性抜群。歌うのも弾くのも楽しい曲だ。はじめは一定のリズムでビートが刻まれる。
♪🎶🎵〜!
そしてサビで急上昇!この緩急さ、たまんない。リズムに乗っているときだった。
ガッタガタ!
廊下から大きな音がして演奏を止めた。
人影 ………。
「誰?」
扉の方向に向かって声を出す。が、出てこない。隠れても無駄じゃないか?見えてるんだから。
「誰かいますか?」
色葉がもう一度聞いた。すると扉が開いて一人の男子生徒が入ってきた。短髪で背の高い人。そしたら「絆創膏貰いに来ました」って。そこまではいいんだよ。問題はそのあと。
「ちょっと中入ってもらってもいい~?」
浪川先生??入れるん??
俺は部屋の奥に行こうと席を立った。が、間に合わずそいつが入ってくる。バチっ。一瞬目が合った。俺はすぐに逸らしたけれどそのあとも視線が刺さるのが分かった。
そりゃ見るか。多分、原因はこの髪の毛だろうな。俺の髪は茶色だ。何だっけ、グレージュっぽいって言われたな。染めてないよ。地毛がこの色。初対面の人からはよく染めているの?って聞かれる。
「あざーした。」
帰った、と思ったのに。まさかの。
「うおっ!」「っ……!?」
こいつの他にもう2人入ってきやがった。目がクリッとした小柄な男子と、ネクタイを軽めに緩めた男子。
「え、誰!?」
いや、こっちが誰だだよ。あと指さすな。そのあとは何かぎゃいぎゃいしながら3人で出て行った。