そんなときだ。

仁が言った。

「兄貴が結婚するみたいで、相手は沙羅なんだって」

私は心臓が飛び出そうだった。

白虎に近づいたのは沙羅をいじめるのともう一つ、仁のお兄さんの総長、怜と接触を図るため。

この町一帯を支配してる怜の彼女になれば、私の格も上がるしママやパパも喜ぶから。

なにより怜はイケメンで、誰もが憧れる存在。

高校を卒業しているから一般人のわたしは接点がなく、お話する機会もない。

その怜と沙羅が結婚!?

私を捨てて家から出て、怜まで奪うなんて、沙羅が怜と結婚してしまったらわたしの居場所は本当になくなってしまう。

きっとママとパパは怜に媚びて沙羅を大事にし始めるわ。

いやよ!ここまで耐えてきたのに、最後の最後で捨てられたくない。

どうにかして、怜と会わなくちゃ。

会って話せば、わたしの方がいいってみんな言うんだから。

「いつ結婚するの?」

「もう一緒に住んでるみたいで、昨日入籍したって親父が言ってた」

わたしは愕然としたけど、気を取り直して考えを巡らす。


怜がわたしを好きになればいい。

結婚したなら離婚したらいい。

沙羅のことみじめに振ってほしいよね。



「それじゃ、お祝いしてあげなくっちゃね」

怜と沙羅を祝うフリして、怜に近づかないといけないね。