気に入らないの。

わたしだってママに認めてもらえるように頑張ってるのに、頭の良さは沙羅に追いつけない。

ママやパパがいつ沙羅に目移りするか、そのことばかり気になる。

だから沙羅よりも優れているところは使っていかなきゃ。

わたしの長所っていえば、社交的な性格と整った顔。

聞き上手らしくって、皆色んな話をしてくれる。

わたしと話すと楽しいみたい。



白虎の副総長の仁やメンバーたちを騙すのも簡単だった。

笑ったら皆わたしの虜になってた。

嘘をついても泣けば皆信じてくれる。

だけど沙羅が帰ってこなくなって、少しずつ周りが変わっていった。


家事担当の沙羅はいないし、ママは家事をしない。

ご飯は出来合いのものを買ってきてお皿に並べてごまかすママ。

パパの前では良き妻でいたいみたいで、取り繕う姿に反吐がでる。

部屋が汚くなってきたら家事代行を頼んでるみたい。

何日かしてパパは沙羅がいないことに気づいたけど、ママが「沙羅は部屋にこもってるの」って言ったらパパは信じちゃってるし。

アホらしい。

ママを信用してるパパも、ママも、本当は嫌いだけど…ママとパパの望むような子でなければ私も沙羅みたいに扱われてしまう気がして。


沙羅は優しくて明るくて大好きなお姉ちゃんだったけど、なんとなくママが沙羅を嫌っていることが分かった。

わたしと沙羅が楽しそうだとママは嫌そうにする。

次第に、わたしは自分の心に蓋をした。

そして、時間をかけてわたしとママで沙羅を追い詰めた。

なんでママがあんなに沙羅を嫌うのか分からないけど。

沙羅がいなくなって初めて、沙羅に意地悪したことへの良心の呵責と、そうしなければいけなかったんだという使命感に、私の心は軋むようだった。


沙羅はどこで、何をしているだろう。

仁はどこか上の空で、そんな仁を幹部やわたしは心配した。

本当は心配するフリだけど。

沙羅をいじめるために利用しようと思ったのに、沙羅はいなくなるし仁は腑抜けてるし…。

わたしの周りについてた白虎の護衛の数は次第に減っていった。