家にかえると柚子がいた。

母は出かけているみたい。

柚子に聞いてみるチャンスだと思った。


「さっきのは、どういうこと…」

「さっき?あ~今日の朝のね。姫になりたかったから、お姉ちゃんにいじめられてて学校も辛いって話したんだよねっ。そうしたらわたしを守るために姫にしてくれるって!」

華が咲くような、素敵な笑顔で言ってのける。


「そんなことのために…私の名前を使わないで…!」

「なーにその態度、沙羅のくせに口答えしないで」

柚子に睨まれたら、私はびくって怯えてしまった。

言い返せばよかったけど、すぐに母が帰ってきて、それ以上なにも言えなかった。


でも柚子はすぐに母に言いつける

「ママ!沙羅が私のやることにケチつけるんだよ!」


「最近は言うこと聞くようになったと思っていたのに。今日はもう帰ってこなくていいわよ」


私の腕を引っ張り、そのまま無理やり玄関に放り出された。

すぐに鍵とチェーンの閉まるガチャンという音。

追い出されて見上げた空には黒い雲が広がり始めいていた。