「梓、こんにちは」

「沙羅ちゃん、こんにちはっ」

梓の家の前で車を停めると、私は降りる。

「友達と一緒に学校行けるなんていつぶりだろう…楽しみ」

今日から梓と一緒に新しい高校に通うこととなった。

定時制で、私たちは夕方から授業が開始する。

「道案内ありがとう」

「沙羅ちゃんに案内が必要か分からないけどね」

梓がちらりと背後を見ると、護衛の黒服数人。

梓の家まで車で行って、そこから徒歩。

私が友達と歩いて学校に行きたいと望んだらこうなった。

友達と仲良く登校するっていうのに憧れがあっただけなんだけどね。

柚子のせいで学校では沢山の嫌なことを経験したから、残り数か月の高校生活は楽しいもので終わらせたい。

梓とは本家で会って以来だけど、久しぶりの友達のように接してくれて、私の緊張もほぐれた。

通学途中、連絡先も交換し合って、沢山連絡するねって二人で笑った。


学校に着いた。

私たちと入れ替わりに、通常の時間帯の子たちがぞろぞろと帰宅している。

「ここが今日から通うところなんだ、実感湧いてきたかも」

「編入試験とか受けに来なかったの?」

「オンラインで済ませたし、手続きも怜がやってくれたから、来たのは初めてなんだ」

「大事にされてるんだね。本家で怜さまのいつもと違う様子には驚いちゃったけど、仲良くていいなって」

「すっごく仲いいんだよ」

私は怜の自慢話をしながら教室へ向かった。