ある日、朝の登校中、周りが声を潜めながら、こっちをみてなにか話している。
陰口だろう、と思うものの、いつもは聞こえるように悪口を言われることも多く、なんだか気になった。
校門に着くとこの街の暴走族『白虎』のメンバーがたむろしており、バイクが数台停まっている。
その中でリーダーっぽい雰囲気の男の子が、こっちに向かって歩いてきた。
後ろには柚子が泣きそうな顔で、他のメンバーに守られるように立っている
「おい、お前、柚子の姉だな?」
「そうですけど…」
「お前なんかを姉とは認めたくないが、柚子をいじめるな。今日付けで柚子は白虎の姫になる、手をだしたら白虎を敵に回したも同然だ。」
思いがけない言葉に、私は言葉を失う。
私が柚子をいじめているの?
暴走族のメンバーに睨みつけるように見られて、訂正するより恐怖が勝ってくる。
ちらりと柚子を見ると、私をみて笑っていた。
柚子は姫になるために、私を利用したんだね。
白虎の姫になる口実として、いじめられてると嘘をついて取り入り、守ってもらえるように仕組んだのだと思う。
いつもの柚子のやりそうなことで、私のことはお構いなしだ。
これから私はますます学校生活を送りにくくなるだろう。
白虎を怒らせた女として過ごさなければならないのだから。