「怜はどうして私にそこまでしてくれるの?」
純粋な疑問だった。
私を家から出すために結婚、なんて。
人生の一大イベントのはずで、怜はモテるから相手には困ってないと思うし。
「今も昔も、ずっと沙羅が好きなんだ」
「私を…?」
「家から出してやるなんて口実で、俺が沙羅と居たいだけだ」
「私なんて、怜みたいな立派な人に好かれるような人じゃないよ」
「沙羅は本当に自信がねえな」
「当たり前でしょ、私は柚子みたいになれないんだから」
「沙羅はアイツみたいにならなくていいんだよ。今のままで魅力的なんだから」
「そんなわけ、ない。両親だって、柚子だって、クラスメイトだって、誰も私を…」
「あんな奴らのことは放っておけ、沙羅の価値に気づいてないだけだ。これからは俺が自信をつけさせてやる」
嬉しかった。
私のことを肯定してくれる人なんて初めてで。
何か言わなくちゃいけないのに言葉がうまく続かない。
いつも認めてもらえず、柚子の世話をさせられ、比べられ、家のこともしなさいと言われる。
お母さんは家事をしない。私にやらせる。
家族の雑用を代わりにこなすくらいの価値しかないのだと言われたこともある。
「柚子より見目が悪く、陰気だから」とか「喋るのが下手、要領も悪いし愛想もない」とか。
「記憶力しか取り柄がないんだから、柚子のこと裏で支えなさい」
そう言うお母さんの言葉を借りて、柚子は私を使う。
お父さんは忙しくてほとんど家にいない。
そうして、私は柚子が表舞台で輝くための影武者になってしまった。
