「こっちだ」

車を見送ると怜が私の手を引いて、マンションの入り口へ案内してくれる。

ロックを解除してエントランスに入ると、広々としていた。


エントランス正面に水槽があり、大きな魚が数匹泳いでいる。

入り口すぐに受付があり、コンシェルジュらしき人が頭を下げた。

怜によると、あのコンシェルジュは住人の顔を全員覚えており、防犯面で頼りになるからこのマンションを借りたのだとか。


常設されてるカフェスペースの横にはずらりと本が並んでいる。

そしてこのカフェスペースは、夜はお酒も提供するらしい。

共用の銭湯やサウナ、ジムまで完備されているが、怜は共有設備を一切使わないらしい。

理由を聞くと周りの奴らが寄ってくるから落ち着かないとのこと。


怜は真っすぐエレベーターへ向かい、最上階を目指す。

エレベーターを降りてみると、この階には玄関らしき扉が一つしかない。

「ドアが一つしかないんだけど、15階は怜専用なの?」

「そうだ。この階は俺らだけだ。だから伝えておく。もし知らない奴がこのフロアに降り立ったら、外に出るな。」

「分かった。それはよくあることなの?」

「このマンションは警備が厳重で、コンシェルジュが立ち入る人のチェックをしているから、そういうことは滅多にない。だがもしもの時はエントランスにコンシェルジュがいるんが、内線で伝えたら追い払ってくれる。」