大きなマンションの前で車が止まった。
「ここが俺の借りてるマンションだ。俺用に親父が用意してくれてる別邸だと、他の組員が多く…沙羅も落ち着かないだろうから、しばらく二人でゆっくり過ごせるように、自分で契約してるマンションの方にした」
「そうなんだ、気を遣ってくれてありがとう」
他の組員…ってことは白虎の人たちもいるのだろうか。
会わなくて済むようにしてくれたのかな。
怜が車のドアを開けてくれる。
ゆっくり降りると、かすかに潮の香りがした。
「ここって、海が近いの?」
「ああ、そうだ。今度遊びに行こうな」
「うん」
車の中から声が聞こえる。
「それじゃ怜さん、沙羅さん、お疲れさまでした!」
「沙羅ちゃんまたね~」
武は頭を下げ、圭介は手を振っている。
対照的な二人だな。
「送ってくれてありがとうございました」
「沙羅ちゃんもゆっくり過ごしてね」
わたしはその場で軽くお辞儀をした。