「俺に対して、無条件で助けてくれる奴はまずいない。恩を売って自分だけ利益を得たかったり、何かにつけ足を引っ張って蹴落とそうとしたりする奴ばかりだ」
「そんな、だって当時はまだ子供で…」
子供のうちからそんな風に周りを見ているなんて、悲しくなる。
「組長の息子、そして長男という立場は重いんだ。妻の立場を狙って迫ってくる女も後をたたない。沙羅みたいに本気で心配して、一生懸命話を聞いて傍にいてくれることが俺には初めてのことだったから、本当に嬉しかったんだ」
「それは、泣いてるときは誰かに話を聞いてもらいたいものじゃないかなって思ったから」
「そう思うのは沙羅自身がそう思っているからじゃないか。沙羅だって誰かに話したかったり頼りたかったりするんだろう」
そう言われて、黙ってしまう。
だって、毎日辛いし話を聞いてくれる人もいないし、一人ぼっちでとても孤独だ。
このままだといつか私の心はぽっきり折れてしまいそうだった。
「沙羅は毎日泣きたい思いで過ごしていたんだろう。あの後すぐに沙羅について調べて、どうにかしてやりたいと思っていた。今まで助けることが出来なかったが、こうして救出できたし今度は俺が助けてあげたい。だから俺の家に誘ったんだ」
分かったか、と怜が付け加える。
「ありがとう」
ずっと昔から私のことを心配してくれる人がいたのだと嬉しくて、少し泣いてしまった。
怜が優しく頭を撫でてくれる。
撫でてくれる手は大きくてゴツゴツしていて、とても温かかった。