話し終えた怜は、私の方へ目線を向けてきた。
「怜の話だと、どうして柚子のことを疑ったのか分からないよ。白虎の皆はすぐに柚子を信じたのに。周りの子も柚子の言うことなら無条件で信じるのに」
「沙羅は覚えていないか」
「なにを?」
「昔、朝影組が開催したパーティーで会ったことがあるんだが」
「昔、一度だけお母さんに連れて行ってもらった記憶が少し、あるかな。普段は行けないけど、あの時だけ無理やり連れていかれて…」
「きっとその時だ。中庭で俺たちは出会った。」
はっと思い出す。
嫌なことが多くてパーティーのことはあまり思い出さないようにしていた。
だからもう、おぼろげな記憶しか残ってないけど。
確か、手入れの行き届いた緑豊かな中庭の隅っこで。
うずくまって、泣いていた男の子がいた。
私がパーティーが嫌で逃げだした先に、先客がいたからびっくりしたんだっけ。
けれどそれ以上に泣いている男の子にびっくりして、話をきいてあげた。
「もしかしてあの時…」
「忘れられてなくてよかった、改めて礼を言うよ。あの時はありがとう」
最初はなにも話してくれなかったけど、パーティーが初めてなこと、今後参加するかどうかも分からないし、親しい友達もいないから誰にも言わないよって言ったら、ゆっくり話してくれたんだったよね。
別れ際、男の子が元気になってくれてよかったと思った。