乗り込むと車内に蔓延するタバコの匂い。
運転手の人は厳つくて怖そうな感じ、助手席の人はあの場所で助けてくれた時に後ろに控えてた人に似てる気がする。
「昨日は全然話せなかったから、今日は聞きたいことあるんじゃないか?」
そう声をかけられて、質問しやすくなった気がする。
「あの、まず貴方の名前を聞いても?」
「俺は朝影怜、助手席のが圭介だ。そして専属運転手の武だ。」
「これからよろしくねー。これでも怜の右腕を務めているよ、怜の傍にいるなら俺の保護対象だから全力で守らせてもらうね」
圭介と紹介された人は、明るく陽気な人で、優しそうな雰囲気から想像できないくらい言葉に力強さを感じる。
守ってもらう機会なんて、そんなにないんじゃないかなと思うんだけど…。
「俺は怜さんの専属運転手ですが、今日から沙羅さんの運転手にも任命されましたので、頼ってください」
武さんは厳つくて怖いかと思ってたけど、にこやかに笑いかけてくれて愛嬌がある人だ。
「えっと、蓮見沙羅です。改めて助けてくれてありがとうございます。」
「そんなに畏まらなくていいし、俺のことは怜と呼ぶように、敬語もナシで」
「えっ、それはちょっと…」
「これは命令だ。家主の命令だ。俺んち来るんだろう」
卑怯な言い分に分かった、と返すと怜は嬉しそうにしていた。