軽く検査を受けて、特に問題がなかったのでこのまま退院していいみたい。

荷物は何もなくて、看護師さんに案内されるまま裏口へ向かうと黒塗りの高級車が止まっていた。


昨日家に来いって言われたし、あれに乗るのかな?

通りすがりの人がチラチラ見ていて、近寄りたくないなって思ってしまった。


だけど車の中から昨日会った人が出てきて、こっちに向かって歩いてくる。

私の目の前で止まった彼は、見上げるほど背が高く、眩しいくらい顔が整っていて、直視するとなんだかドキドキしてしまう。

「昨日はありがとうございました」

まずは昨日のお礼を伝えるべく、お辞儀する。

すると、彼の手がゆっくり私の頭を撫でてきた。


「退院できるってさっき主治医から連絡あって、迎えにきた」

「ありがとうございます。あの、本当に貴方の家に行くんですか?」

「当たり前だろ、じゃなきゃなんの為に迎えにきたんだよ」


手を引かれ、車の前まで連れて、ドアを開けてくれた。

繋いだ手は、なんだか優しくて、全然痛くなくて、緊張したんだ。