私は促されるようにイヤホンを手に取った。実はいつも気になっていた。ショウタは一体何を聴いているんだろうって。ショウタは無口で、あまり多くを語ってくれないこともあって、私はいろんな手段を使ってでも、少しずつ彼の心を知っていきたかった。

「これは…」

驚くべきことに、イヤホンからは何の音もしなかった。イヤホンが壊れているわけでも、曲が再生されていないわけでもなく、どうやらショウタは「無音」を聴いていたらしい。

「なんだ〜!」

私がそう言うと、ショウタは少し笑っていた。
ショウタは「ミステリアス」なる言葉を擬人化したような男子だった。

クラスの女子たちは「たしかにショウタ君は高身長だし、イケメンだけれど、何考えてるか分からなくてとっつきづらいよねー」と言っていた。私もたしかにその通りだと思う。

それでも、いや、それだからこそ、私は彼にもっと近づいていきたいと強く思うのだ。