福原は笑顔で首を振るだけだ。

「えっと、結良のこと好きなんじゃないかって、枝野が」

言いづらそうに望由が呟く。

「…えっ」

枝野が福原を引きはがす手をとめる。

私からはその顔を見ることはできない。

けど、私の視界の中で、3人がニコニコしている。

「変なこと話してんじゃねーよ」

そう言って枝野が足早に去っていく足音が聞こえた。

私は福原の腕をどかして振り返る。

もう枝野は教室からいなくなっていた。


枝野は私の方を見なくなった。

別に直接話さないとかいうわけじゃない。

「ね、今日さ数学当たるんだけど、ここの解き方教えて」

わざわざ枝野の席までいってわからな問題を聞く。