ああ、私は枝野のことが、好きだ。

それからは心を読める枝野にわからないように別のことを考えてカモフラージュして隠した。

電車で隣に座るときも、話していて枝野が笑う時も、私の心臓は一段と大きく打つ。

いつの間にか離れた手はずっと反対の手で握っている。

私の最寄りに電車が到着して、私は席を立った。

「じゃあ、また明日」

「うん、気を付けてね」

ドアが閉まる音を背後に聞きながら、私は握っていた手を広げた。

少し眺めて、また、握りなおした。