松島家。
 二階建てである。まだ暑い秋。
 二階の部屋に松島ここなは、ベッドで寝ていた。汗をかいている。パジャマ姿。薄着。部屋は暑かった。青春の香りが漂っていた。ベッドの横には机があった。机の上には目覚まし時計。鏡。
 「ここな」
 と、母、松島さゆりの声がした。
 「ここな」
 ここなは目をこすって目を覚ました。
 「ふわあ」
 ここなは上半身を起こした。ここなは、机の上にある時計を手に取った。ここなは時計を見た。
 「ん」
 「あああああああああ」
 ここなは、あわてて起きると、部屋を出て廊下に出た。ここなは階段を降りる。玄関へ出て、居間への引き戸を開ける。がらがら。
 ダイニングキッチン。カウンター横にテーブルがあり、松島敬三(まつしまけいぞう)(50歳)、ここなの父が座って朝食を食べている。スーツ姿。
 「なんで起こしてくれなかったの?」
 と、ここなは母さゆり(48歳)にいった。パーマをかけたショートヘア。かっぽう着姿。
 「何度も呼んだわよ」
 と、さゆり。
 「ふん。社会人失格だな」
 と、敬三。
 「うるさいいいいい」
 と、ここな。
 「何い、親に向かってその口のきき方はなんだ」
 と、敬三が怒鳴った。
 「もう、急いでるんだからやめてよ」
 と、ここな。
 「何!」
 と、敬三。
 「急いでるんでしょ。ご飯は?」
 と、さゆり。
 「いい。すぐ支度して出るから」
 「ああ、そう」
 ここな、引き戸を開け、玄関へ出る。洗面所へ行く。
 洗面台がある。鏡がある。ここなは顔を見た。ここな、顔を洗う。鏡を見て歯磨きをする。
 ここな、自分の部屋へ行く。