ここなは、11時過ぎに帰宅した。
 松島家。玄関前に灯がついていた。ここなはバッグからカギを出して、ドアのカギ穴に差し込んだ。がちゃっとカギをあけた。ドアノブをひねってドアをあけた。
 玄関。横に靴箱がある。ここなは、電気のスイッチを入れた。玄関が明るくなった。
 どん、と音がした。ぞっとした。あいつだ。がらがら、と居間との引き戸が開いた。敬三だ。パジャマ姿。
 「今、何時だと思ってるんだ」
 と、敬三がどやした。
 「もううるさい」
 「門限過ぎてるぞ。11時だろう」
 「ちょっとすぎただけじゃん」
 ここなは、ヒールを脱いで、床にあがった。
 「だいたいあやめにはなんで門限ないの」
 「早く風呂入って寝ろ」
 と、敬三がきつくいった。
 「うるさいいい」
 ここなはいって、階段をのぼっていった。
 松島家二階廊下。
 ここなは、廊下を歩き、ドアを開けた。部屋に入った。
 「ああ」
 ここなは、ベッドに仰向けに寝転んだ。
 ここなは、上半身を起こした。バッグをとり、中から柿の種を取り出した。袋を切って、中に手を突っ込んで食べた。
 トン、トン、とドアをノックする音。
 「お姉ちゃん」
 と、あやめの声。
 「あやめ」
 ドアが開いた。ここなは、あやめを見た。かわいい顔。パジャマ姿。
 「ああ、お姉ちゃん、ベッドで柿の種食べてるう」
 「いいじゃん」
 「ん、お姉ちゃん?」
 「ん」
 あやめは自分の耳をさした。
 「これこれ」
 「あ、ああ。イメチェンよ。イメチェン」
 「好きな人でもできた」
 ぎくっとするここな。
 「何馬鹿いってんのよ」
 「あ、あやしい」
 「もう」
 「お姉ちゃん、早くお風呂入りなよ。お父さん、怒ってくるよ」
 「もう、あいつうるさい」
 「だったら早くしなきゃ」
 「わかたっから、焦らせないでよ」
 ここなは、机についてイヤリングをとった。タンスへ行き、着替えとバスタオルを取った。
 「おい、ここな、早く風呂入れよ」
 敬三の声。
 ここな、いやそうな顔をする。あやめ、廊下へ出る。
 「お父さん、お姉ちゃん今から入るって」
 あやめ、ここなの部屋へ来る。
 「ありがとう」
 と、ここな。
 「お姉ちゃん早く」
 「もう」
 ここな、部屋を出る。廊下を歩き階段まで行く。階段を降りていく。
 玄関。
 がらがらと引き戸が開く。敬三現れる。
 ここな、びくっとする。
 「早く入れよ」
 「もう。うるさい。びっくりした」
 「いつまで飲んでたんだ」
 「うるさいい」
 「なんだその口の利き方は」
 「もう」
 そこへ母さゆりが現れる。パジャマ姿。
 「お友達と飲んでてそれで遅くなっちゃったのよね。カスミちゃんだっけ」
 「うん」
 「カスミちゃん、しっかりしてるから」
 と、さゆり。さゆりは敬三を向いた。
 「お父さんはもう休んでてください」
 「あ、ああ」
 といって敬三は去った。
 「ありがとう」
 と、ここな。
 「洗面室で話そうか」
 と、さゆり。
 「うん」