何色でもない私をあなた色に染めて

「瀬来さん、不倫て何？」


「なんでそんなこと聞くの？」


小学生の小生意気な私がそう聞いたのは
スマホを見てたら
瀬来さんのことが書いてあったから


「ん、ちょっと…
学校で友達が言ってたから」


女優さんと不倫したって
数年前の記事だった


「不倫は…結婚してる人と…
結婚してる人を…本気で愛すること」


瀬来さんは
その女優さんを本気で愛してたってことか


「結婚してる人を好きになったらダメなの？」


「ダメ…なんだろうね
世間はダメって言ってる」


「本気でもダメなの？」


「本気だから、ダメなのかもな…
地位も名誉も仕事も全部なくなるくらい
悪いことらしい」


「ふーん…よくわかんない」


小学生の私には
それがどんな事なのか検討もつかなかった


「わかんないよな…
もし、瑛のママが
パパの他に好きな人ができたって言ったら
瑛はどぉ思う？」


「んー…
でもママはパパのこと好きだろうし
パパだってママのこと…」


「だよね
瑛のママとパパは仲良しだよね
こんなこと考えなくていい、ごめん」


瀬来さんとそんな話をした矢先
私のママとパパは離婚した

私が中学生になる年だった

理由はわからなかったけど
私は凄く悲しかった

ママとパパは仲良くなかったの？

ママもパパも私のことを
好きじゃないのかな？


自分のことが好きじゃなくなった
また自分に自信がなくなった

そんな時でも
瀬来さんにメイクをしてもらうと
自分じゃない自分になれて

モデルとしてカメラの前にいる自分は好きだった

瀬来さんが作る世界が好きだった

「瑛、いいじゃん！」
瀬来さんが褒めてくれる

瀬来さんが私を見てくれてる


いつの間にか
瀬来さんに見てほしくてモデルを頑張ってた


私も
瀬来さんが本気で愛した人みたいに
なれるかな？