何も変わらない毎日だった。

 バイト先とアパートを往復するだけの日々。


 変化といえばこうして圭吾や奈巳とたまに飲むくらいで、

 俺の日常に退屈以外のことなど訪れる気配すらなかった。


 なのに。


 あの雨の日、無意識のうちに飛び出してしまった俺の体は、

 他の誰かとの関係をつくってしまった。


 けれどそれも、関係と呼べるほどのものではないはずだ。

 言葉を交わし、一度だけの食事をして、それきりで。

 特に親しくなったわけじゃない。


 なのにどうしても気にかかってしまうのは何故だろう。

 一年前から彼女を知っているからだろうか。

 それとももっと別のところに理由があるのだろうか。



「どうした淳? 渋い顔して」


 首をかしげる圭吾の顔を見ながら考える。

 
 退屈で変化のない毎日。

 それは今だけなのか、もしかしたらずっと続くのか。

 時々不安にかられて眠れない夜もある。


 どうってことない。これが俺なのだから。


 そう思うようにすればするほど、余計に恐ろしくなる。

 動けずにいる自分が。変われないと諦めている自分が。



 彼女を気にかけてしまうことに理由があるとすればきっと、


 あの止まったような時間が、

 降り注ぐ雨が、

 時間に忘れ去られたように…ただ立ち止まるだけの姿が、


 自分と重なって見えていたからかもしれない。

 
 そして俺はあの静止画の中に自分から踏み込んだのだ。

 動かない時間の中に、動けなかったはずの自分の足で。



「おいってば」


 黙りこむ俺を心配したのだろう。

 圭吾の眉間に、珍しく皺が寄っていた。


「ああ、ごめん」


 ――――話す程のことでもないだろう。

 そう思いながら、「何もねーよ」とビールを一気に飲んだ俺の顔に向かって圭吾は


「淳、」

「うん?」

「何かあるんなら言えよ、一応友達なんだし。俺達」


 真顔で言った。