次の日から俺は仕事に復帰した。

 夕方からの勤務をパートのおばさんとともにこなし、

 交代の10時になって店に現れた田中と四日ぶりに顔を合わせた。


 レジにいる俺の姿を捉えた田中の目は大きく見開いて


「藤本さーん、もう大丈夫っすか? 心配しましたよ、もう来ないかもとか思いましたよ」


 客が店内に残っているにも拘らず、

 大声を張り上げた田中の口を半分本気でふさぎながら俺は苦笑した。

 大袈裟なこの態度も、コイツにとっては心からのものなんだろう。

 
「なんだよ、もう来ないかもって」

「だって、そういうヤツ結構いるじゃないですか。休んでそのまま来なくなっちゃうヤツ」

「まあな。でも俺はそんなことできねーし。生活あるし。バイトだけど仕事だからな」

「それもそうっすね」


 妙に納得する田中の顔を見て苦笑いが漏れる。

 事実、田中も学生だ。

 コイツだってやめようと思えばいつでもそうできるだろう。

 遅刻ギリギリのことは多いが、それでも真面目に通ってくるだけでもたいしたもんだ。


「でも良かったー。俺ずっと夜勤店長と一緒だったんっすよ、誰もシフトに着かなくて」

「たまにはいいだろ」

「良くないっすよー」


 いいから早く準備しろ、そう言って田中をスタッフルームに押し込み、

 俺はレジに並んで怪訝な顔をしている客に頭を下げ、スナック菓子の袋をスキャンした。