結局俺は、二日間寝込んだ。

 起きようにも体が言うことをきかなかった。


 久しぶりの高熱に、すっかり体力が奪われていた。

 病院に行こうかとも思ったのだけれど、

 そのための足が動かなかった。


 その間、小川さんが置いていったパンを少しづつかじり、コーヒーを飲んで、

 およそ病人にはふさわしくないような食事をするだけで、

 あとはひたすらベッドに横たわっているだけだった。


 二日間、雨音は聞こえてこなかった。

 閉めたままのカーテンの隙間からは、

 弱いけれど黄色の光がすっと部屋に差し込んで、

 鳥の鳴く声もよく聞こえていた。


 せっかく晴れたのだから洗濯でもしたかった、と

 咳き込みながら思っている自分に、少し笑えた。


 体が動かなくても、時間は正確に過ぎていく。

 嫌だと思っても、生きている限り生活はしていかなければならないのだ。



 三日目の朝も体は重かった。

 けれど丸々二日寝込んだかいがあったのか、

 床の上に足を置いても、ふらつくことはなくなっていた。


 軋むような頭の痛みも抜けていた。

 熱もようやく平熱まで持っていくことができた。


 けれど病み上がりの体は、

 カーテンを開き、窓を開け、深呼吸をしても、爽快とまではいかない。


 ぐっと伸びをした節々から骨が鳴り、最後の悲鳴を上げていた。

 俺は今日も大事をとって休みをもらうことにした。


 三日も仕事を休んだことなど初めてだった。

 店長はともかく、田中はたぶん心配しているだろう。


 店長と二人のシフトで退屈そうにレジに立っている田中の姿を想像しながら、

 たまには真面目に働かせるのもいいだろう、と苦笑いが漏れた。