俺はまだ、たまにだけれど、あの図書館にも足を運んでいる。

 中にいる利用客の顔触れはほとんど変わっていない。

 変わったところといえば、小川さんが居なくなったことくらいだ。


 カウンターの中にはいつものように斎藤さんがいて、小難しい顔をしながら台帳に目を落としている。


 本を借りるために俺がカウンターの前に立つと、

 これも変わらず下から伺うようにしてメガネの中の小さなを目を持ちあげるのだが、以前のようなそっけなさは無くなっていた。

 今では俺に気付くと、一瞬だけ頷いてくれる。

 もっとも、俺が勝手にそう感じてるだけかもしれないけれど。


 小川さんが座っていた席には、別の人が腰掛けている。

 男性の司書が入ったのだ。

 斎藤さんよりも10歳くらい若いだろうか。

 俺はまだ、あまりこの人に馴染めていない。