どんなに好きで、どんなに尽くしても、

 届かない想いというのは必ずある。


 俺が彼女のためにささげた日々は、

 結局、無意味だったのだろうか。


 そもそも、俺が勝手にはじめたことだ。

 彼女を救おうと、

 彼女をあの場所から連れ出そうと、

 躍起になり、時間までも切り詰めて。


 けれど、

 今そこにある、彼女の白い傘がすべての答えなのだ。


 俺の贈ったピンク色の傘を撫でながら、

「嬉しい」と呟いた彼女の言葉も、単なるお礼でしかなかったんだ。

 使ってさえくれない。


 はじめから、答えなんか出ていたのだ。



 寄りかかる棚の前で俺は、絶望にも似た気持ちに包まれていた。

 けれどどうしても、視線をそらすことができない。


 小川さんはまだじっと前を見ている。

 降りしきる雨。

 あなたはいったい、今、なにを見ているんだ――。


 戻ってこないとわかっているものを、どうしてそんなにまでして――。