その日の夜勤も、俺はずっと上の空だった。

 飯島さんの言葉が頭から離れない。


“子供じゃないんだ”


 そんなわけがない。

 そんなことあるはずがない。


 不安を打ち消そうと頭を振るたびに吐き気までが込み上げてくる。


 田中はそんな俺の様子を気遣って帰そうとしてくれたのだが、

 今のこの状況で一人になる自分のことを思うと、居慣れたコンビニで時間を過ごしているほうがまだマシだった。


「藤本さん、顔色悪いっすよ? 大丈夫ですか? やっぱり帰ったほうがいいんじゃないですか?」

「いや、いい」

「でも……。じゃあ、奥で休んでてくださいよ。もうすぐ人も途切れるし」

「大丈夫だ」


 たった一週間だ。

 一週間、彼女に会っていなかっただけだ。

 それだけの時間で、何かが変わってしまったというのか。


 奈巳の様子を見て帰ったあの夜、

“そばにいてあげて”

 小川さんの言葉。


 俺はそれに素直に従った。

 おかげで、3人の仲は何とか持ち直せそうだ。


 なのに、この状況は何なんだ。

 逆に俺と小川さんとの間に隔たりが出来始めている?


「何なんだよ、いったい……。意味わかんねぇ……」


 どうしてうまくいかないのか。

 何をすれば正しい答えがでるのか。

 
 俺は、何をやっているのか。


 小川さんは、何を考えているのか。


 どうしてこんなに、苦しまなければならないのか。


 
 ―――誰か、教えてくれ……