それから一週間、俺と小川さんの時間は穏やかに過ぎた。


 彼女を抱きしめて腕の中に包んでいる間、

 そっとその唇に自分の唇を重ねる瞬間、

 彼女が俺を見上げて微笑む時、

 たまらないほどの幸せに、俺は満たされていた。



 その日、小川さんは俺の部屋にいた。

 彼女からもらった白い本。

 そこに一向に記されない俺の文字を小川さんは唇を尖らせながらせがんでいた。

 そんな彼女の様子に苦笑しているときだった。


 部屋のなかに玄関からの呼び鈴が響いた。

 時間は夜の八時を過ぎていた。


「誰だろう」


 小川さんと顔を見合わせてから玄関へ向かう。

 扉を開ける前に、もう一度呼び鈴が鳴らされた。


 しつこい奴だ、と思いながら鍵を外し扉を開くと、

 そこにはじっと俺の顔を見つめる圭吾が立っていた。