眠る小川さんの身体を包みながら見るベランダの窓は白く曇っている。


 夜が明ければきっと、真っ白な世界が広がっているのだろう。


 何もかも覆いつくした白い道の上に、

 初めの一歩をくっきりと残したくなるような静寂さで。



 決して暖かいとはいえない部屋の中で俺は、けれど寒さなど微塵も感じていなかった。


 温かくて柔らかくて細い身体が腕の中にいる。


 幸せという言葉以外は浮かばないほど、十分に満たされていた。




 その夜見た夢の中の小川さんは、相変わらずあの場所に立っていた。

 けれど違ったのは、俺がその隣りにいたということだ。


 小川さんは俺の手を握っていた。

 俺を見上げて、微笑んでいる。



 ―――ああ、やっと隣りに立てたのだと、俺は思っている。




 そして、もっと強く感じている。