小川さんの休日に合わせたので、初詣に出向いたのは3日が経ってからだ。


 行きに立ち寄ったカフェでも道路でも、

 そしてまだまだ込み合っている境内をそろそろと歩いている時も、小川さんはよく笑っていた。


 おみくじを引くと揃って小吉で、その結果が不満なのか小川さんの唇が尖っていた。


 もう一度引こうと俺の腕をつかむ姿は、彼女が年上であることを忘れてしまいそうなほどに可愛らしく感じた。



 その日は珍しく俺の部屋に戻った。


 小川さんとこうして会うようになってから、彼女が俺の部屋に立ち寄ったのはたったの2回だ。


 あのパンが食べたいという小川さんの意見に従ってベーカリー店でオレンジ味のパンを買った。


 その流れで俺の部屋についたようなものだったので、片付いていない部屋の中を整理するのが大変だった。


 小川さんは笑いながらそんな俺を見ていた。


 彼女の笑顔が多くなったことに、俺は心の底から嬉しさを感じていた。



 少しだけ片付いた部屋の中で他愛もない会話をしながらパンを食べた。


 夕焼けが薄っすらと部屋の中に差し込んでくる。


 小川さんはその夕日を少しだけ眺めて、それから思い出したようにカバンを手にとった。


「藤本くん」

「はい?」

「これ」

「……え?」


 カバンから何かの包みを取り出した小川さんはそれを俺に差し出した。


「すごく遅くなっちゃったけど、クリスマスプレゼント」

「え? クリスマスプレゼント?」

「うん。あ、でもクリスマスっていうのもないか。新年だもんね。えっと、じゃあ新年のプレゼント」

「新年……」

「ふふ。何か変よね。でも受け取って。私から、藤本くんへのプレゼントです」


 包みを受け取った俺は、小川さんの顔を眺めた。

 思いがけない出来事に、ぼうっとしたままで。


 小川さんは微笑みながら「開けてみて」と身を乗り出している。


 俺は急かされるようにして受け取った包みを開いた。