「どしたの? 淳。ぼーっとして」

「あ? ああ、なんでも」

「何か、相変わらずだね」

「そうそう変わるかって」

「だよねー」


 あはは、と笑いながら、奈巳は元気良く生中を注文した。


 奈巳も圭吾と同様、大学時代に知り合った友人だ。

 何がきっかけだったのかは忘れたけれど、

 圭吾と行動するようになってから、いつの間にか傍にいた。


 圭吾ほどではないけれど、奈巳もまた、元気で明るい、今時の女の子…という感じだ。

 無口で寡黙、度々そう言われる俺の周りに、

 よくもまあ、ここまで元気な人間がふたりも揃ったもんだと感心してしまう。


 奈巳ともこうやってたまに飲む。

 大体いつも3人だけれど、ここのところ忙しそうにしていた奈巳は抜きだった。

 久しぶりに見れた顔に、ほんの少し眠気も引いた。


「ねえ、圭吾。あんたレポート終わったの?」

「いや、まだだけど?」

「ヤバイんじゃない? 来週中に提出なんだよ」

「まだ一週間あんじゃん」

「一週間しか、ないんだよ?」

「大丈夫だって。いつも何とかしてるし」

「手伝って、とか言っても知らないからね、今回は」


 いつものように奈巳の圭吾に対する説教が始まった。

 奈巳は意外にしっかりしている。

 やることはやって、きちんと遊ぶ。

 そんなタイプだ。

 爪の垢を煎じて、圭吾に飲ませてやりたいと思うことがよくある。


「ああ、そうそう、あのね……」


 奈巳の標的が俺に変わった。

 こうして3人…いや、このふたりが揃うと一気ににぎやかになる。


 やれやれ…。

 そんなことを思いつつも、俺は奈巳のおしゃべりに耳を傾けた。

 鼻の頭の雫がまだ残っている。

 指を伸ばして拭いてやると、

「やだ、何かついてた?」

 何て言って焦っている。


 まあ、こういう時間も悪くない。

 俺にとってこのふたりは、

 「大事な友人」であることに違いないのだから。


 何より、

 単純にこいつらが好きだ。