次の日から俺は、本当に毎日彼女のもとへ通った。

 日中は図書館へ。夜は部屋へ。

 バイトと、自分のアパートへ戻るとき以外の時間は、全て彼女の為に費やした。


 彼女を一人にさせないように。


 小川さんにとって全ての出来事が「空」であり「虚」であるならば、

 俺のこの行動も彼女の負担になることはないはずだという考えからだった。


 常識的に考えればはっきり言って迷惑な話だろう。

 毎日毎日昼夜関係なく、好きでもない男が自分のもとへやってくるのだから。


 「来ないで」とか「迷惑だ」とか言われたほうがまだマシだった。

 何故ならばその言葉の中には、少なからず彼女の「気持ち」が含まれているからだ。


 けれど小川さんは特に戸惑う様子も見せなかった。

 初めこそ毎日現れるようになった俺に不思議な顔も見せていたけれど、

 4日、5日と経つうちに、自然に俺を迎え入れるようになっていた。


 彼女と会っている間は、何てことない会話をするだけだ。

 時間があれば一緒に食事をし、レンタルしてきた映画を見た。


 小川さんは時々笑って、ふいに寂しそうな顔で窓の外を見る。

 
「どうかしましたか?」


 分かっているのに俺は聞く。


「ううん、何でもない」


 彼女は答える。

 


 飯島さんが言うように、

 彼女は本当に、流されるままだった。