コンビニには、それでも8時15分前に着いた。

 夜勤だった田中と顔を合わせると、田中は少し困惑気味な表情をしていた。


 俺の格好が前の日と同じものだったことと、

 寝不足でむくんだ顔に気づいていたのかもしれない。

 もしかすると、昨夜の歩道橋の上での出来事も見ていたかもしれない。


 それでも田中は、何も聞いてこなかった。

 明るく「おはようございます」と言って、

 それから「おつかれ様でした」と頭をさげて店を出ていった。


 8時から夕方までのバイトは、ほとんど寝ていない体にはさすがにきつかった。

 時折、小川さんの顔が浮かんでは消えるけれど、

 昨夜の彼女の感触は不思議なほど思い出せなかった。


 何か幻でも抱いたような、そんな気分にさえなっていた。

 けれど、今朝、小川さんは確かに自分の隣りで眠っていたのだ。

 小さな肩を布団から覗かせて。