こんな雨の中で、立ち止まったまま君は


 意味が分からなかった。


 “殺した……?”


 一体、どういうことなのか。


 “彼が死んだ……”


 ふと、混乱する頭の隅に写真の男性の顔が浮かんだ。

 桜の花びらが舞う中で、並んで微笑むふたりの姿。


 死んだというのは、その彼だろうか。


 殺したって?

 小川さんが?

 その彼を?


 じゃあ……あの飯島さんは何なのか。

 一体、彼女の周りで何が起こっているのか。


 小川さんは膝を抱えるようにして泣いている。

 疑問はいろいろ沸いてくるのに、

 それ以上のことを聞くことができなかった。


 体を震わせて泣いている彼女。

 自分がそうさせてしまったのだと気づくと、居た堪れない気持ちが込み上げてきた。


「ごめん……小川さん」


 彼女は顔を覆ったまま泣き続ける。


「……頼む……泣かないで」


 俺はきつくきつく彼女を抱きしめた。

 
「ごめん……」


 小さな頭を撫でながら、何度も耳元で繰り返した。