動物園に行ったあの日から五日が過ぎた。


 12月に入って街はまた一段と冷え込み、

 イルミネーションは一斉に点された。


 一日だけ雨が降った。

 …小川さんはその日、歩道橋の上にいた。

 俺はその姿をコンビニの窓越しから見ていた。


 30分が経ち、一時間が経ち、

 彼女が店に立ち寄るのを待っていたけれど、

 小川さんは結局、ここには来なかった。


 歩道橋の上の小川さんはあの傘をさして、じっと前を向いていた。

 いつものように。

 
 彼女の視線はきっと、

 一度もこのコンビニを捉えなかっただろう。


 あそこに立つ時の小川さんは“無”だ。

 俺の隣りで泣いていた時のように。


 本当は手を振ってみようかとも思った。

 けれど、

 窓越しに見つめている俺のことなんて、

 これっぽっちだって目に入ってるはずなどないのだ。


 彼女があの場所に立つ理由は何なのだろう。

 まだ、

 俺には何もわからない。