改札を抜けてすぐの狭い通りに出ると、

 早速酔っ払った学生たちの集団が目に入った。


 大声で叫ぶ顔面は笑顔ばかりで、相当楽しそうだ。

 自分にあんなことがあっただろうか。

 考えてみたけれど、うまく思い出せない。


 こっちへ歩いてきた集団と肩がぶつかりそうになり、慌てて身をよじる。

 酒と油の匂いが両脇をだらだらと通り過ぎていった。


 圭吾が待つ店までの道のりを、同じことを繰り返しながら数分歩いた。

 飲む店はいつも決まっている。

 この通りの外れの、白っ剥げたのれんを掲げる小さな居酒屋だ。


 俺が見つけた店だった。

 学生たちが溢れる大衆居酒屋はどうも落ち着かない。


 ひとりで飲みたい店だったのに、今じゃ決まって圭吾付きだ。

 一度連れていってしまったのが間違っていた。

 料理も雰囲気も気に入ったんだろう、

 圭吾の「いつものとこ」になってしまった。


 まあいい。

 他のところに誘われるよりはマシだ。


 圭吾のおしゃべりだけでも相当な騒音なのに、

 学生の笑い声と無意味な音楽がプラスされた空間で何時間も飲むことになるなんて、

 考えただけでぞっとする。