「翠々香?」


コップと一緒に伸ばされた手。その指を見ると、赤や黒、青と言ったペンがついていた。


「このコップは……キレイですか?」

「まさか俺の姿を見て言ってる? 本当に傷つくからやめて」


……落ち込んでる。ここは先生を信じて「洗ってるだろうコップ」を受け取った。

そして、本題へ。


「先生は……、知っていたんですね。
私が〝発情期を迎えていた〟ことを」

「え?」

「だって、学校に助けに来てくれたじゃないですか。

俺の翠々香に何してる!って」

「いや、そこまでは言ってないよ」

「……」
「……」


勢いに任せて言った言葉を否定され、少し恥ずかしくなってきた。

コホンと咳払いをして、「とにかく」と話を戻す。


「家にいるはずの先生が、学校で私を助けてくれた。

それってつまり、私が発情してるって分かってたからですよね?

じゃあ、どうして教えてくれなかったんですか」

「……」