「ねぇ翠々香」


先生に、呼び止められた。


「自分の体……ウサギになる体質は、嫌?」

「……」


そんなの、


「い・や・で・す!」

「!」


眉間にシワを寄せて大声で言うと、驚いたのか先生が固まった。

いやいやいや、驚く方がおかしいから。


「夜はウサギになるって、それってつまり、夜はどこにも行けないって事だもん」

「健全でいいと思うけどなぁ」

「……」


むかっ。

まるで他人事の先生に、腹が立つ。

じゃあ先生、一晩だけでも変わってよ!


「今は学生だからいいかもしれないけど、これから大人になっていくのに、夜の外出禁止はイタすぎます。引きこもりの先生じゃないんだから……」

「おーい、ここに本人いるいる。聞こえてますよー」


わざと、聞こえるように言ってるの!

もう――とむくれる私に、先生は笑うだけ。


……なにさ。先生の自分勝手。