小鳥の囀り、川の粼、木の葉の揺れる音。夕日は暮れ沈み、星は瞬いて、目映い朝日が夜空を染め上げ朝を迎える。
璃来がくれたこんなにも美しい世界を見ていた。
なんて、都合のいい夢だろう。
目の前の真っ白な天井が見えてから動かせる範囲で辺りを見回すと、右手を握る見慣れた彼女が眠っていた。
時計がないため時間が分からず、ただ空が明るいことから昼間だろうと考える。
ほんの一瞬目を閉じ再び開ける感覚を理解したその瞬間、苦しさを覚えた。
違和感を覚え右手を見るも、そこには誰もいない。
「なぁ…んれ…っ」
身体中に付けられた管や機械を無理矢理剥がし出口へ向かおうとしても、体の力が一気に抜けてベッドから落ち容赦なく床に叩きつけられた。
センサーが取り付けられているのかすぐに看護師がやって来た。本能が逃げろと警鐘を鳴らす。
だが暴れれば暴れるほど余計に身体を拘束され、無理に落ち着けられた頃に絶対安静を言い渡された。
それが、一か月前の話だ。あんなに毎日のように降っていた雨は7月に入ると同時に嘘のように晴れが続いた。
同じ病院に運ばれた璃来は未だ目を覚まさない。
動けるようになってから退院し自宅療養になってなお、ほぼ毎日のように春は璃来の病室に通っている。看護師に注意されるまで一日中ずっと。
だけどいつしか転機は訪れる。
「もう来なくていいから」
その日璃来の病室に行くと先客がいた。その人は璃来の母親で、医師に呼びだされて仕方なく来たと言った。
「やめたから、延命治療」
「…………」
「だいたい、もう長くなかったし。生きてるか死んでるかも分かんないのに無駄に金払うのも、コイツもいい気しないでしょ」
一体何を言っているんだ、この女は。
「というか、もー充分でしょ。いい加減はやく金になってアタシを助けてよね」
「……は…? 金?」
「保険金よ保険金。他にコイツにどんな使い道があんのよ」
里琴の嫌味を込めたその言葉を鮮明にとらえ、気づけば春は里琴の頬を引っぱたいていた。
「ふざけるなクソババア!!」
そのまま馬乗りになり里琴の服の襟元を掴み、こぼれるままに暴言を吐き散らす。
すぐに駆け付けたスタッフに取り押さえられたが、そのままありったけの声で絶叫して。
「お前が…っ!唯一の味方のはずのお前がッ、璃来を蔑ろにして母親気取りとか何様のつもりなの!?」
「ちょっと…!何この子ッ、頭おかしいんじゃないの!? 警察!警察呼んでよ!」
ねえ、私たち出会わなければ良かったのかな。
「絶対死んでも許さない!一生…ッ一生呪ってやる!!」
程なくして春は病室を追い出された。
璃来がくれたこんなにも美しい世界を見ていた。
なんて、都合のいい夢だろう。
目の前の真っ白な天井が見えてから動かせる範囲で辺りを見回すと、右手を握る見慣れた彼女が眠っていた。
時計がないため時間が分からず、ただ空が明るいことから昼間だろうと考える。
ほんの一瞬目を閉じ再び開ける感覚を理解したその瞬間、苦しさを覚えた。
違和感を覚え右手を見るも、そこには誰もいない。
「なぁ…んれ…っ」
身体中に付けられた管や機械を無理矢理剥がし出口へ向かおうとしても、体の力が一気に抜けてベッドから落ち容赦なく床に叩きつけられた。
センサーが取り付けられているのかすぐに看護師がやって来た。本能が逃げろと警鐘を鳴らす。
だが暴れれば暴れるほど余計に身体を拘束され、無理に落ち着けられた頃に絶対安静を言い渡された。
それが、一か月前の話だ。あんなに毎日のように降っていた雨は7月に入ると同時に嘘のように晴れが続いた。
同じ病院に運ばれた璃来は未だ目を覚まさない。
動けるようになってから退院し自宅療養になってなお、ほぼ毎日のように春は璃来の病室に通っている。看護師に注意されるまで一日中ずっと。
だけどいつしか転機は訪れる。
「もう来なくていいから」
その日璃来の病室に行くと先客がいた。その人は璃来の母親で、医師に呼びだされて仕方なく来たと言った。
「やめたから、延命治療」
「…………」
「だいたい、もう長くなかったし。生きてるか死んでるかも分かんないのに無駄に金払うのも、コイツもいい気しないでしょ」
一体何を言っているんだ、この女は。
「というか、もー充分でしょ。いい加減はやく金になってアタシを助けてよね」
「……は…? 金?」
「保険金よ保険金。他にコイツにどんな使い道があんのよ」
里琴の嫌味を込めたその言葉を鮮明にとらえ、気づけば春は里琴の頬を引っぱたいていた。
「ふざけるなクソババア!!」
そのまま馬乗りになり里琴の服の襟元を掴み、こぼれるままに暴言を吐き散らす。
すぐに駆け付けたスタッフに取り押さえられたが、そのままありったけの声で絶叫して。
「お前が…っ!唯一の味方のはずのお前がッ、璃来を蔑ろにして母親気取りとか何様のつもりなの!?」
「ちょっと…!何この子ッ、頭おかしいんじゃないの!? 警察!警察呼んでよ!」
ねえ、私たち出会わなければ良かったのかな。
「絶対死んでも許さない!一生…ッ一生呪ってやる!!」
程なくして春は病室を追い出された。
