降り続く雨の中、璃来は再び落雷を待っていた。双方の間に緊迫した空気が流れる。お互いに銃を構えたまま膠着状態が続いた後、待ち望んだ瞬間が訪れた。
強烈な黄色い光が差し込んだとほぼ同時に空を切り裂くような轟音が劈く。璃来はそれを見計らい銃口を天井に向けた。
___すかっ。
引き金を引くもシリンダーが回る音がしただけの空撃ちだった。
一瞬の時が止まった後、正気を保てなくなった春が咄嗟にドアを開け璃来を外に押し出す。警官も弾のない銃だと思い込み一気にふたりに詰め寄った。
ギイ、と強く音が鳴りバルコニーの床が軋む。
柵まで少し距離があり、春が柵を掴んだ璃来に手を伸ばすも踏んだ床がふっと抜けた。遅れてバキッ!と金属音が響きふわっと浮くような一瞬の感覚の後重力に押される。
バルコニーは錆び付いて脆く、少し体重かけただけですぐに崩れるような状態だった。
「やッ、っはなして!!」
ひとりの命知らずの鬼が春の腕を掴んだ。
掴まれた腕の痛みが春の最悪の記憶を蘇らせる。
「_ぁ、あ…っいやあああ!!!嫌だ、もう戻りたくない!!離してよお!!!」
春が引き上げられそうになれば璃来は迷わず鬼に向けて銃を撃ち、その弾は春の腕を掴む鬼の腕に命中した。それでも鬼は離さない。
璃来の持つピストルは撃ってまだなお鬼たちに向けられている。最後の一発を撃ち弾のなくなったこのピストルはもうハッタリに過ぎないが、警官も本物だとわかった以上自分かわいさに必要には近づかない。
「璃来!私に当たってもいいからもう一度撃って!お願い!!」
痕が残るほど鬼に強く掴まれた腕を振りほどこうにも春の力では到底及ばない。ほぼ悲鳴に近い悲痛な叫び声が璃来の耳に痛いほど刺さる。
だけどやっぱり璃来は笑って言うの。ぼくは春を撃つことなんてできない、って。
だって、どうせ死ぬなら一緒がいい。
次第に床がぐらつき、バルコニーごと璃来が落ちそうになっていた。この下は断崖絶壁だ。
" 月が綺麗だね "
打ちつける雨音のせいで声は届かないが璃来の口の動きでその言葉が春に届いた。
こんな悪天候でそんな言葉を言う璃来が春に望む言葉はただ一つ、他でもない璃来の為の言葉だった。
置いていかないと約束したふたりにもう縋るような言葉は必要ない。
「…っでもいい…死んでもいいわ……っ、!」
「___春、おいで」
柵にもたれかかり璃来はそう春に叫び両手を広げた。
春は最後の力を振り絞り、春の腕を掴む鬼の腕の撃たれた場所に思いっきり噛み付いた。そして手が緩んだ瞬間に外壁を蹴り、璃来のもとへダイブし抱き締めた。
その拍子にバルコニーの支柱が外れ、ふたりは夜の海に堕ちていった。
強烈な黄色い光が差し込んだとほぼ同時に空を切り裂くような轟音が劈く。璃来はそれを見計らい銃口を天井に向けた。
___すかっ。
引き金を引くもシリンダーが回る音がしただけの空撃ちだった。
一瞬の時が止まった後、正気を保てなくなった春が咄嗟にドアを開け璃来を外に押し出す。警官も弾のない銃だと思い込み一気にふたりに詰め寄った。
ギイ、と強く音が鳴りバルコニーの床が軋む。
柵まで少し距離があり、春が柵を掴んだ璃来に手を伸ばすも踏んだ床がふっと抜けた。遅れてバキッ!と金属音が響きふわっと浮くような一瞬の感覚の後重力に押される。
バルコニーは錆び付いて脆く、少し体重かけただけですぐに崩れるような状態だった。
「やッ、っはなして!!」
ひとりの命知らずの鬼が春の腕を掴んだ。
掴まれた腕の痛みが春の最悪の記憶を蘇らせる。
「_ぁ、あ…っいやあああ!!!嫌だ、もう戻りたくない!!離してよお!!!」
春が引き上げられそうになれば璃来は迷わず鬼に向けて銃を撃ち、その弾は春の腕を掴む鬼の腕に命中した。それでも鬼は離さない。
璃来の持つピストルは撃ってまだなお鬼たちに向けられている。最後の一発を撃ち弾のなくなったこのピストルはもうハッタリに過ぎないが、警官も本物だとわかった以上自分かわいさに必要には近づかない。
「璃来!私に当たってもいいからもう一度撃って!お願い!!」
痕が残るほど鬼に強く掴まれた腕を振りほどこうにも春の力では到底及ばない。ほぼ悲鳴に近い悲痛な叫び声が璃来の耳に痛いほど刺さる。
だけどやっぱり璃来は笑って言うの。ぼくは春を撃つことなんてできない、って。
だって、どうせ死ぬなら一緒がいい。
次第に床がぐらつき、バルコニーごと璃来が落ちそうになっていた。この下は断崖絶壁だ。
" 月が綺麗だね "
打ちつける雨音のせいで声は届かないが璃来の口の動きでその言葉が春に届いた。
こんな悪天候でそんな言葉を言う璃来が春に望む言葉はただ一つ、他でもない璃来の為の言葉だった。
置いていかないと約束したふたりにもう縋るような言葉は必要ない。
「…っでもいい…死んでもいいわ……っ、!」
「___春、おいで」
柵にもたれかかり璃来はそう春に叫び両手を広げた。
春は最後の力を振り絞り、春の腕を掴む鬼の腕の撃たれた場所に思いっきり噛み付いた。そして手が緩んだ瞬間に外壁を蹴り、璃来のもとへダイブし抱き締めた。
その拍子にバルコニーの支柱が外れ、ふたりは夜の海に堕ちていった。
