「実は春に隠してたことがあるんだ」
夜も更けた真夜中。突然の璃来のカミングアウトに、春は璃来を見つめ首を傾げた。
「ぼくね、もうすぐ死ぬんだ。余命は、そうだね、ちょうど梅雨が開ける頃に。うち結構貧乏でさ、母さんがぼくに多額の保険金かけてるの。ぼくが死ぬのを待ってるの」
声が出なかった。愕然とした。否、本当は心のどこかで分かっていたのかもしれない。
だが、言葉にして突き付けられたその重みは想像を遥かに超えて、深く、深く春の心臓を突き刺した。
「…っ治る病気じゃ、ないの…?あの笑顔は、…嘘、なの…?」
春の最悪の予想が確信に変わってしまった瞬間だった。
春が璃来とまだ一緒にいたいと言ったあの日、璃来が変に謝ったのはずっとは一緒にいられないことが分かっていたからだった。
だから今朝、私が自分を忘れても、なんて訳わかんないこと言ったのか。
「心配かけたくなかったんだ。独りよがりに押し付けて、春が潰れるのが怖かった。それに言ったら本当になる気がして、ずっと言えなかった」
「…なに、それ。私のためとか、私が悲しまないようにだとか、どれだけお人好しなの…!?それなら図々しいほうがずっと良かった!もっとワガママ言ってほしかったよ!そんな、今さら酷いよ…ッ!!」
決して璃来を責めたい訳ではないのに、春の口からはそんな言葉ばかりが零れてゆく。
「でもね、でも、聞いて春。ぼくはずっと、窮屈なあの場所病院と母さんから逃げたかった。そんなときにあそこに君がいた。君ともう一度出会えた。ぼくは春に、今も昔もずっと、ずーっと救われてたんだ。だから_」
半ば璃来の言葉を遮るように春が口を開いた。
「っ救われてたの私のほうが…、!わ、たし、璃来のいない、人生、なんて…もう生きられ、ない…いやだよ、や、だ、…っ!!」
ふわりと頬を緩めて、赤子をあやす母親のように璃来は笑顔で、真っ直ぐに春の視線を独り占めして言った。
「…じゃあ、
______________一緒に死んでくれる?」
冗談なんてひとつも含まないあまりにも荷重な璃来のその言葉に、平然と春は頷いた。
信じられるからこその約束。
もう絶対に裏切らないの意味を込めた言葉。
「もうなにも怖くないよ。ぼくは絶対に春を置いていかない」
ふたりには最初から、選択肢なんてものは無かった。
「ねぇ、此の儘さ、…逃げちゃおうか」
雨に紛れてフクロウの鳴いた丑三つ時。
ふたり示し合わせたように手を繋いだ。
